第180章 スランプ

「佑奈さん、本当に来てくれたんですね。紘樹が私をからかってるんだと思ってました……」

佐伯薫は、かつて二人がどれほど火花を散らしていたかなど忘れてしまったかのようだった。いまの彼女はただのファンで、水野佑奈を見る目はきらきらと輝き、今にも星がこぼれ落ちそうですらある。

水野佑奈は、その大げさな芝居を、感情の読めない表情で眺めた。形だけ、唇の端をわずかに持ち上げる。

「挨拶はいい。始めましょう。私、時間が惜しいの」

面子を潰されたはずの佐伯薫は、聞こえなかったかのように平然としていた。勝手知ったる調子で佑奈を自分のオフィスへと案内する。

水野佑奈は内心、思わず感心した。ここまで飲み込...

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